ロコモと身体的フレイルは、どちらも人体の運動機能低下を指しますが、対象となる範囲が異なります。ロコモは原則として、歩行を始めとする移動に関するもののみが対象です。それに対して身体的フレイルは、移動だけでなく、身体に関する機能低下全般を指します。
そして、自覚症状の有無という違いもあります。ロコモの場合は、自覚症状がないことが珍しくありません。自動車や公共交通機関などを使った移動が主で、自分の身体を使った歩行や階段の昇降をする機会が少なければ、気付かない内に移動に関する運動機能が衰えてしまい、ロコモになる可能性はあります。しかし、身体的フレイルの場合は、自覚があることが前提です。身体機能が低下していることを自覚しなければ、身体的フレイルとは呼びません。
さらに、健康な状態に戻しやすいかどうかという違いもあります。身体的フレイルの対象となる機能低下は、範囲が広いです。そして、身体機能が低下しているという自覚を持っていても、その身体機能低下が軽度である場合は、介護サポートを受けて、健康な状態に戻すことが不可能ではありません。けれど、ロコモの場合は、健康な状態に戻せる可能性は非常に低いです。ロコモはすでに運動機能が衰えていることがほとんどで、運動をするのが困難です。そのため、運動による筋力増強ができません。増強できない筋力は、衰えが進行し、さらに運動がしにくくなるという悪循環になります。したがって、ロコモの場合は、健康な状態に戻すのではなく、進行を食い止めるのが主な対策となります。